毎朝コーヒーを淹れると、ドリッパーの中に湿った粉が残ります。そのまま捨てている人も多いのではないでしょうか。
淹れたあとの粉、いわゆるコーヒーかすは、世界全体で年間およそ600万トン出ていると見積もられています。家庭やカフェ、工場など、さまざまな場所から出ているものです。今回は、この「かす」の使い道を紹介します。
捨てると、どうなるのか
コーヒーかすの多くは、埋め立てられたり、燃やされたりしているとされます。埋め立てられたかすは、酸素の少ない環境で分解され、メタンや二酸化炭素といった温室効果ガスを出すことが指摘されています。
かすは、使った粉より重くなって出てきます。たとえばダブルのエスプレッソでは、約30gの粉から、水を含んだかすが45〜60gほど残るとされます。チェコでは2019年に約30億杯のコーヒーが飲まれ、およそ2万4,000トンのかすが出たという試算もあります。
また、オーストラリアの調査では、シドニーの921のカフェから年間3,000トンを超えるかすが出て、その93%が埋め立てられていたと報告されています。一杯ごとには小さな量でも、集まると大きな量になるのです。
かすの中に残っているもの
淹れたあとの粉にも、多くの成分が残っています。
これらの成分が、かすをさまざまな用途に生かせる理由になっています。かすに含まれる成分は飲みもののコーヒーとよく似ているため、食品の素材として使う研究も進められています。
家庭でできること
においを吸着させる
淹れたあとの粉は、目に見えない小さな穴がたくさん空いた「多孔質」の素材です。UCCの解説によると、水分を含んだ粉がアンモニアを溶かして穴の中にとらえ、さらに化学的に吸着・中和することで、においを抑えるといいます。湿ったまま小皿に入れてトイレに置いたり、よく乾かして袋に入れ、靴箱や冷蔵庫に置いたりする方法が紹介されています。
ただし、湿ったままの粉は温度が高いとかびが生えやすいため、1〜2日をめどに取り替えるのがよいとされます。
土に混ぜる
コーヒーかすは堆肥づくりや土の改良に使えることが、研究で確かめられています。ただし、使い方には注意が必要です。
- 生のまま多く使わない:かすに残るカフェインやタンニンなどが、植物の発芽や成長をさまたげることがあります
- 少量を、時間をかけて:土に混ぜた1年目は植物の成長が抑えられ、土の中の微生物がカフェインやポリフェノールを分解したあと、2年目に土の炭素や窒素が増えたという研究も紹介されています
すぐに肥料として効くものではなく、少しずつ土に還していくもの、と考えるのがよさそうです。
一杯を淹れ終えたあとにも、粉にはまだできることがあります。
産業での新しい使い道
コーヒーかすは、炭素を多く含み、燃やしたときの熱量が高い素材でもあります。研究では、乾燥したかすの発熱量は1kgあたり20MJを超え、熱処理を加えると32MJほどまで高まると報告されています。このほかにも、かすから取り出した油からのバイオディーゼル、バイオエタノールやバイオガスといった燃料、食品包装の素材、食品の原料など、さまざまな使い道が研究されています。
研究者たちは、燃やして熱を取り出す方法は、かすの「最後の使い道」と考えるべきだと指摘しています。かすには多糖類やたんぱく質、フェノール類、脂質など役に立つ成分が多く含まれているため、まずはそれらを生かし、燃やすのはそのあとに。そんな順番で考えることが、資源を無駄にしないことにつながります。
一杯の、そのあとまで
コーヒーのサステナビリティというと、産地での栽培や取引に目が向きがちです。けれど、飲み終えたあとの粉をどうするかも、私たちの手の中にある小さな選択です。明日の朝、ドリッパーに残った粉を、少しだけ見つめ直してみてください。