朝の忙しい時間、水と粉をセットしてボタンを押せば、あとはコーヒーができあがるのを待つだけ。コーヒーメーカーは、いちばん身近な抽出器具のひとつです。
「手軽だけど、味はそれなり」と思われがちですが、機械まかせにできる部分が多いぶん、押さえるべきポイントもはっきりしています。今回は、コーヒーメーカーのしくみと、おいしく淹れるためのコツを紹介します。
湯はどうやって粉に届くのか
一般的な電動のドリップ式コーヒーメーカーは、次のような流れでコーヒーを淹れます。
- タンクの水が、底のホースから細い金属の管(加熱室)に入る
- 管のまわりのヒーターが水を温める
- 温められた湯は「熱サイフォン」の原理で管を上り、シャワーヘッドから粉の上に注がれる
- 湯は粉とフィルターを通り、下のサーバー(カラフェ)に落ちる
ヒーターにはサーモスタットがついていて、湯が熱くなりすぎないように入ったり切れたりをくり返します。ガラスのサーバーは、多くの場合、保温用のプレートの上に置かれています。
粉に湯を通してフィルターでこすという点では、ハンドドリップと同じです。人の手のかわりに、機械が湯を沸かして注いでくれるのです。
コーヒーメーカーの歩み
- 1908年:ドイツのメリタ・ベンツが、ノートの紙をペーパーフィルターの原型にしたドリップ器具を考案
- 1954年:初期の電動ドリップ式のひとつ「ヴィゴマット」がドイツで特許を取得
- 1970年代はじめ:アメリカで「ミスター・コーヒー」などが登場し、電動のドリップ式が家庭に広まる
電動のコーヒーメーカーの普及で、手で淹れるドリップは一時期あまり見られなくなったといわれます。その流れは2010年代まで続き、そこからふたたび手で淹れるドリップが広く見直されるようになりました。
機械を選ぶときの目安
スペシャルティコーヒー協会(SCA)は、家庭用のコーヒーメーカーを第三者機関で試験し、抽出の品質や安定性の基準を満たしたものを認証する制度を設けています。認証を受けた機種の説明には、次のような機能がよく並んでいます。
- 蒸らし(プレインフュージョン)機能:最初に少量の湯で粉をなじませる
- 広いシャワーヘッド:粉全体にむらなく湯をかける
- 平底のバスケットや、途中で抽出を止めるドリップストップ
- 保温性のある魔法びん型のサーバー
湯を華氏197〜205度(およそ92〜96℃)に温めると説明している機種もあります。全日本コーヒー協会も、ドリップの適温を95℃前後としています。湯の温度がしっかり上がることは、機械を選ぶうえでの大切なポイントです。
機械が湯を注いでくれるぶん、人は豆と粉と水に、ていねいになれる。
毎日の一杯をおいしくするコツ
全日本コーヒー協会が挙げる「おいしいコーヒーを淹れるための基本原則」は、コーヒーメーカーにもそのまま当てはまります。
- 新鮮な焙煎豆を使う:できれば淹れる直前に挽く
- 器具に合った挽き方にする:ペーパーフィルターのドリップなら中細挽きが目安。挽き目がそろっていると抽出のむらが減ります
- コーヒーの量を決める:取扱説明書の目安から始め、粉と湯の比率を好みに合わせて調整
- 水に気を配る:浄水器を通した水や軟水がすすめられています(水の硬度)
- 器具を清潔に保つ:タンクやシャワーヘッド、サーバーをこまめに洗う
もうひとつ覚えておきたいのが、できあがったらサーバーを軽く回して混ぜること。抽出が進むにつれて粉から溶け出す成分は少なくなるため、サーバーの底にたまったコーヒーのほうが、上よりも濃くなりやすいのです。
味がしっくりこないときは
抽出時間が短いと「酸っぱくて薄く」、長いと「苦くてエグく」なるといわれます。コーヒーメーカーでは湯の注ぎ方は変えられないので、調整するのはおもに挽き目と粉の量です。
- 酸っぱくて薄い:挽き目を少し細かくする、粉を少し増やす
- 苦くて重い:挽き目を少し粗くする、粉を少し減らす
変えるのは一度にひとつだけ。ボタンひとつで淹れられる手軽さはそのままに、豆と挽き目を少し気にかけるだけで、毎朝の一杯はぐっと好みに近づいていきます。