毎朝の一杯が、この先もずっと同じように飲めるとは限りません。コーヒーは、気候の変化にとても敏感な作物だからです。

この記事では、気候変動がコーヒーの産地にどんな影響を与えているのか、そして生産者や私たちにできることは何かを、順を追って見ていきます。


コーヒーは、暑さにも寒さにも弱い

私たちが飲むスペシャルティコーヒーのほとんどは、アラビカ種です。アラビカ種はもともとエチオピアの高地の森で育った植物で、涼しく、昼と夜の寒暖差がある環境を好みます。霜には弱く、暑すぎても実がうまく育ちません。

そのため、コーヒーが栽培できる場所は、赤道を挟んだコーヒーベルトの中でも、さらに条件のそろった土地に限られます。標高の高い山の斜面に、名の知れた産地が多いのはそのためです。

言いかえれば、コーヒーにとって「ちょうどいい場所」は、もともととても狭いのです。そこへ気温の上昇が重なると、その狭い範囲がさらに押し縮められていきます。


産地でいま起きていること

気候変動の影響は、ある年に突然あらわれるというより、畑のさまざまな場面に少しずつ積み重なっていきます。

研究機関からは、このまま気温の上昇が続けば、2050年ごろまでにアラビカ種の栽培に適した土地が大きく減るという予測も出されています。予測には幅がありますが、多くの研究が同じ方向を指しています。


いちばん影響を受けるのは、小さな農家

世界のコーヒーの多くは、家族で畑を営む小規模な農家によってつくられています。大きな農園のように灌漑設備を整えたり、病気に強い品種へ一気に植え替えたりする余裕は、多くの場合ありません。

コーヒーの木は、植えてから実をつけるまでに数年かかります。植え替えのあいだは収入が途絶えてしまうため、変化に合わせて畑をつくり直すことは、生産者にとって大きな賭けでもあります。国際コーヒー機関(ICO)の報告書も、多くの産地でコーヒーの売り上げが生産コストや生活費に届かず、木の植え替えや気候変動への備えに投資する余裕が失われていると指摘しています。

気候変動は、環境の問題であると同時に、生産者の暮らしの問題でもあるのです。


畑でできること:森と一緒に育てる

そうした中で注目されているのが、アグロフォレストリーです。コーヒーの木を、背の高い木々や果樹と一緒に育てる農業のかたちで、シェードグロウンもそのひとつです。

森の中で育つというのは、アラビカ種にとって本来の姿に近い環境でもあります。実がゆっくり熟すことで、風味の面でもよい影響があるとされています。


品種と、加工の方法を見直す

病気や暑さに強い品種の開発も進められています。ハイブリッド・ティモールの血を引く品種のように、カネフォラ種の強さを取り入れたものや、異なる系統をかけ合わせた新しい品種がその例です。暑さに比較的強いリベリカ種など、アラビカ種以外の種にも改めて目が向けられています。

一方で、アラビカ種は遺伝的な多様性がもともと小さい植物です。エチオピアの森に残る在来種は、未来の品種づくりにとって貴重な遺伝資源でもあります。

精製の方法も、環境への負荷に関わります。大規模なウォッシュドの精製所では大量の水や電気、燃料が使われます。私たちが扱うGOOD COFFEE FARMSのドライウォッシュは、自転車をこいで動かす自転車精選機で果皮と果肉を取り除き、水・電気・燃料を使わずにコーヒーを精選する方法です。

おいしいコーヒーを未来に残すことは、それを育てる土地と人を守ること。

飲む側にできること

気候変動という大きな問題を前にすると、一杯のコーヒーにできることは小さく思えるかもしれません。それでも、選び方を少し変えることには意味があります。

生産者が品質に見合った価格を受け取れれば、畑の手入れや、変化に備えるための投資にもつながります。サステナビリティとは、遠いどこかの話ではなく、毎日の一杯の選び方の中にあるのかもしれません。