小さなカップに注がれる、濃厚で香り高いエスプレッソ。ほんの数十秒で淹れ上がる一杯ですが、その短い時間の中には、いくつもの大切な工程が詰まっています。

ハンドドリップでは湯の注ぎ方が味を左右しますが、エスプレッソでは、湯を通す前の「粉の準備」がとても重要になります。今回は、エスプレッソのしくみと、ポルタフィルター、タンピングの基本を紹介します。


圧力で、短い時間に引き出す

エスプレッソは、細かく挽いた粉を押し固め、そこに圧力をかけた湯を通して抽出する方法です。一般に、大気圧のおよそ6〜9倍ほどの圧力で淹れられるとされます。

湯は粉の層を通り抜けるあいだに成分を溶かし出し、表面にはクレマと呼ばれるきめ細かな泡の層ができます。短い時間で多くの成分を引き出すため、ほんの少しの条件の違いが味に大きく表れるのがエスプレッソの難しさであり、面白さでもあります。


ポルタフィルターという器具

粉を詰めるのが、ポルタフィルターです。取っ手のついた金属のホルダーに、小さな穴がたくさん開いたバスケットがはめ込まれています。ここに粉を詰め、マシンの抽出口(グループヘッド)に取り付けて湯を通します。

バスケットの中で、粉はひとかたまりの層になります。この層が均一であるかどうかが、湯の流れ方、つまり抽出のむらを大きく左右します。


チャネリングを防ぐ

圧力のかかった湯は、粉の層の中で、いちばん通りやすい道を探して流れようとします。粉の密度にむらがあったり、すき間やひびがあったりすると、湯がそこに集中して流れてしまいます。これを「チャネリング」といいます。

チャネリングが起きると、湯がよく通った部分は成分が出すぎ、通らなかった部分は出きらないまま残ります。その結果、抽出にむらができ、苦味やえぐみの原因になるといわれます。

エスプレッソの一杯は、湯を通す前の、ほんの数秒の準備で決まります。

圧力を上げれば、よいわけではない

2026年に学術誌Physics of Fluidsで発表されたポーランドの研究では、カフェ用のエスプレッソマシンで何百杯ものエスプレッソを淹れ、圧力と湯の流れの関係を調べました。圧力が低いうちは、圧力を上げるほど湯の流れも増えます。ところが、エスプレッソで使われるような高い圧力になると、粉の層は押し縮められて弾力のある材料のようにふるまい、圧力を上げても流れはそれ以上増えなくなるといいます。

つまり、エスプレッソの抽出は、ただ強い力で湯を押し込めばよいというものではありません。粉の層がどのような状態になっているかが、流れ方と味わいを左右しているのです。


タンピングは「強さ」より「水平」

バスケットに詰めた粉を、タンパーという道具で押し固める作業がタンピングです。その目的は、粉の中の空気のすき間をなくし、表面を平らにならして、湯がむらなく流れるようにすることにあります。

オーストラリアの焙煎会社Seven Milesは、機械で一定の力をかけるタンパーを使い、10kg・20kg・30kgの力で押し固めたエスプレッソを比べる試験を行いました。

つまり、大切なのは強く押すことよりも、毎回同じように、水平に押すこと。抽出時間を調整したいときは、押す力ではなく挽き目を変えるのが基本とされます。


基本の流れ

  1. 豆を細かく挽き、決めた量の粉をバスケットに入れる
  2. 粉の表面を平らにならし、かたよりをなくす
  3. タンパーを水平に保ち、まっすぐ押し固める
  4. ポルタフィルターをマシンに取り付け、すぐに抽出を始める

粉の量、挽き目、タンピング。条件をひとつずつそろえていくと、味の違いが少しずつわかるようになります。RAW COFFEEのThe Raw Blendは、エスプレッソにもおすすめしている中煎りのブレンドです。小さな一杯の奥深さを、ぜひ楽しんでみてください。