カフェインを控えたいけれど、コーヒーは楽しみたい。そんなとき、まず思い浮かぶのはデカフェでしょう。けれど世の中には、もともとカフェインが少ない性質を持って生まれた品種もあります。
その代表がローリナです。インド洋に浮かぶフランス領レユニオン島で生まれ、豆の先がとがった形から「ブルボン・ポワントゥ(とがったブルボン)」とも呼ばれています。
ブルボンから生まれた突然変異
レユニオン島は、かつて「ブルボン島」と呼ばれていました。ブルボンという品種の名前の由来になった島です。
フランス農業省のレユニオン地域局の資料によると、島のコーヒーは、18世紀のはじめにフランス東インド会社が持ち込んだアラビカの木に始まります。その数十年後、自然の突然変異によって生まれたのがブルボン・ポワントゥでした。
- 木の姿:こぢんまりとした円すい形にまとまる
- 葉:細長い形をしている
- 豆:片方の端が鋭くとがっている(Coffee Review)
研究者のあいだでは、ブルボンの自然突然変異として「ローリナ」の名で知られています。
カフェインはおよそ半分
ローリナの最大の特徴は、カフェインの少なさです。1963年にブラジルの研究者が発表した論文では、ローリナのカフェイン含有量は比較に用いた品種のおよそ半分と報告されています。
この性質は、ひとつの劣性遺伝子によるものと考えられています。同じ論文は、ローリナの特徴が「lr」と呼ばれる劣性の遺伝子によって決まり、その遺伝子がさまざまな性質にまとめて強く影響していると述べています。豆の油分も少ない品種だと報告されています。
1998年の研究では、豆を一粒ずつ測ったところ、カフェインの量は0.36%から1.08%まで幅がありました。また、葉の酵素の働きを調べた結果から、ローリナではカフェインが分解されやすいのではなく、つくられにくいのだと考えられています。
カフェインを取り除くのではなく、はじめから少なく生まれてきた豆。
一度は消えた島のコーヒー
レユニオン島のコーヒーは、19世紀に大きく広がりました。同じ資料によると、栽培面積は1865年のおよそ2,000ヘクタールから、1880年には6,000ヘクタール近くにまで増えています。
ところが19世紀の終わりになると、サトウキビ栽培の広がりや病気の影響で生産は落ち込み、1950年ごろには産業としてはほぼ姿を消してしまいました。大きな農園がなくなったあとも、ブルボン・ポワントゥは島の家々の庭でひっそりと生き残っていたといいます。
日本とのつながりと復活
転機は2002年に訪れました。日本の買い手がブルボン・ポワントゥに関心を示したことが、復活のきっかけのひとつになったとされます。
- 2002年から2007年にかけて、地域圏や国、フランスの農業研究機関CIRADの支援を受けた研究・試験プログラムが行われた
- 島じゅうを調べて約2,000本のコーヒーの木が見つかり、評価を重ねて4本の母樹が選ばれた
- 栽培試験から、島の西部と南部の標高700〜1,000mが適していることがわかった
現在は協同組合を中心に生産が続けられ、生産量は生豆で年間およそ1トンほど。サイクロンの年には500〜600kgまで落ち込むこともあるといいます。資料は、ブルボン・ポワントゥが日本でとくに高く評価され、カフェインが少なく苦味が穏やかなのが特徴だと紹介しています。
希少であるということ
生産量が限られているローリナは、出会える機会がまだ多くありません。レユニオン島の資料も、干ばつやサイクロンといった気候の影響や、ブロッカなどの害虫による被害を生産の課題に挙げています。
カフェインを抜く加工をしたコーヒーとは違い、ローリナは植物そのものの個性として、カフェインが少ない豆です。どこかで見かけることがあったら、その小さくとがった豆が歩んできた、島の長い歴史にも思いをはせてみてください。