コーヒーの香りを表す言葉というと、花や果物、チョコレートなど、心地よいものを思い浮かべるかもしれません。けれど、評価の現場で同じくらい大切にされているのが、「本来あってほしくない風味」を見つけることです。

こうした風味をオフフレーバーといいます。いくつかの代表例を知っておくと、カップの中で起きていることが少し見えるようになります。


オフフレーバーを表す言葉

World Coffee Researchのセンサリーレキシコン(コーヒーの風味を表す用語集)には、心地よい香りと並んで、好ましくない風味を表す項目も収められています。

それぞれに参照用の見本が定められていて、評価する人どうしが同じ言葉で同じ香りを指せるようになっています。


薬品のような「リオ臭」

ブラジルのコーヒーで知られる欠点に、「リオ臭」と呼ばれるものがあります。2022年の研究は、これを薬品のような、フェノール臭やヨードを思わせる、強く不快な香りと説明しています。

その目印とされるのが、2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)という成分です。

同じ研究によると、リオ臭はブラジルのコーヒーの約20%に影響するとされ、ほかの産地でも報告されています。


生のじゃがいものような「ポテト臭」

アフリカ中部の大湖地域、とくにルワンダやブルンジ、コンゴ、ウガンダのコーヒーで見られるのがポテト臭です。World Coffee Researchによると、焙煎して挽いたときに、皮をむいたばかりの生のじゃがいものようなにおいがします。

この欠点は、アンテスティアと呼ばれるカメムシの仲間による被害と結びついていると考えられています。健康への害はないものの、たった一粒の豆が一袋のコーヒー全体を台なしにしてしまうこともあるといいます。被害を受ける豆は一本の木の中でもごく一部ですが、焙煎し、挽いて淹れる過程で全体に広がり、実際に味わってみてはじめて見つかるとされます。そのため畑では害虫の管理が、精製所ではチェリーを水に浮かべて傷んだものを取り除くなど、選別による対策がとられています。

欠点の多くは、一粒の豆から始まる。だからこそ、選別と管理が味を守る。

湿気が生むかび臭さ

かび臭さは、乾燥や保管の段階で起こりやすいオフフレーバーです。国連食糧農業機関(FAO)の資料は、豆の水分値が基準を超えた状態が長く続くと、カビが生える可能性があると指摘しています。

  1. 決められた方法で、水分値12%まで乾燥させる
  2. 乾燥中も乾燥後も、豆を再び湿らせない
  3. 湿気の入らない、風通しのよい倉庫で保管する

FAOは、乾燥と保管をとくに重要な段階に挙げています。


飲む人にもできること

産地や精製で生まれるオフフレーバーは、飲む側では防ぎようがありません。けれど、焙煎後の豆の扱いは別です。焙煎した豆は時間とともに香りが失われ、古びた香りや紙のような香りが出てくることがあります(劣化)。

豆は買ったら早めに使い切り、空気や湿気、光を避けて保管する。それだけでも、家で淹れる一杯の印象は変わります。いつもと違う、気になるにおいを感じたら、それはコーヒーが教えてくれるサインかもしれません。