春と秋、北米と中南米のあいだを行き来する小さな渡り鳥たちがいます。そうした鳥たちがやってくる中南米の山あいには、コーヒーの産地が広がっています。
木々に囲まれたコーヒー畑は、鳥たちにとって森に近い大切なすみかになります。そうした畑で育ったコーヒーを認証するのが、バードフレンドリーです。今回は、この認証のしくみと考え方を見ていきます。
研究者が生んだ認証
バードフレンドリー認証は、1990年代の終わりに、米国スミソニアン協会の科学者たちによってつくられました。鳥のすみかを守り、渡りをする鳴き鳥を保護することが目的です。いまではコーヒーだけでなく、カカオにも対象が広がっています。
背景には、鳥の数の大きな減少があります。スミソニアンによれば、米国とカナダの鳥の数は1970年以降に3割近く、およそ30億羽減っており、すみかの喪失がその大きな要因とされています。そして、世界のコーヒーの75%は、鳥の居場所を残さない、あるいは森を壊すような方法で栽培されていると指摘しています。
認証の基準
バードフレンドリーの基準は、長年の研究にもとづいて定められています。スミソニアンが公開している基準の概要は、次のとおりです。
- 有機であること:有機認証(または参加型保証制度)を受けていること
- 森林破壊ゼロ:過去10年間に森林を切り拓いていないこと
- 生物多様性の保全:次の2つの道のいずれかで満たすこと
アグロフォレストリーの道では、コーヒー畑の日陰の割合(被覆率)が40%以上、1ヘクタールあたり10種以上の日陰樹があり、その60%以上が在来の樹木であることが求められます。森林保全の道では、畑に対して2:3の割合で森林を確保し、安定した管理の計画を持つことなどが求められます。
さらに、認証された豆が収穫後の処理や保管のあいだも分けて管理され、記録で裏づけられていること(トレーサビリティ)も条件です。推奨される取り組みとして、何層にも重なる樹冠、落ち葉や植物で地面を覆うこと、日陰樹の剪定を控えめにすること、川沿いの緩衝帯なども挙げられています。
コーヒーの木の上に、鳥の歌が聞こえる畑。
なぜ「木陰」が大切なのか
コーヒーはもともと、森の木陰で育つ植物です。全日本コーヒー協会のコラムでは、日陰をつくる高い木の下でコーヒーを育てるアグロフォレストリーが、生き物のすみかや森林の保全につながるだけでなく、果物や木材など多様な収穫をもたらし、小規模な農家の暮らしを支えるとも紹介されています。
スミソニアンは、バードフレンドリーの基準を満たす畑は、手つかずの森に次ぐほどの鳥のすみかになると説明しています。また、木々と一緒に育てる畑は、日なたの単一栽培の畑に比べて大気中のCO2を多く取り込むという研究もあります。
木陰で育つシェードグロウンのコーヒーは数多くありますが、バードフレンドリーは、日陰の質や樹木の多様性まで具体的な数字で求めている点が特徴です。
どこで、どれくらいつくられているのか
スミソニアンによれば、バードフレンドリーのコーヒーは14か国の4,000を超える農家によって、年間3,600万ポンド以上が生産されています。多くは、メキシコからペルーにかけての中南米の高地でつくられていますが、エチオピアやインド、タイにも認証を受けた農園があります。
たとえば有機コーヒーの大産地ペルーについて、米国農務省の2024年の現地報告は、小規模な生産者が取得できる認証のひとつとしてバードフレンドリーを挙げています。
また、ほかの認証の中には、認証された原料が一部しか含まれていなくてもラベルを使えるものがあるのに対し、バードフレンドリーは認証を受けた豆だけでつくられた製品であることを約束しているといいます。
一杯から、森とつながる
バードフレンドリーのコーヒーは、ほかのコーヒーより少しだけ高いこともあります。けれどもその差は、渡り鳥の休み場所と、森とともに暮らす生産者を支えることにつながっています。
認証のマークは、どんな畑で育ったかを知るための手がかりのひとつです。カップを手にしたとき、遠い山あいの木々と、そこにやってくる鳥たちの姿を思い浮かべてみてください。