私たちが毎朝何気なく口にしている一杯のコーヒー。その出発点は、赤道をはさむコーヒーベルトのどこか、山の斜面に植えられた一本の木です。

花が咲き、実が熟し、摘み取られ、種が取り出され、乾かされ、海を渡り、焙煎されて、ようやくカップに注がれる。そこには、ほぼ一年がかりの長い道のりと、たくさんの人の手があります。今回は、その旅をはじめから順にたどってみましょう。


1. 開花 — ジャスミンのような白い花

乾季が終わり、まとまった雨が降ると、コーヒーの木はいっせいに白い花を咲かせます。ジャスミンにも似た甘い香りがあたりに漂いますが、花の命はわずか数日。この短い開花が、その年の収穫の始まりです。

花が散ったあとには小さな緑の実がつき、アラビカ種の場合、品種や気候によって異なりますが、半年から9か月ほどかけてゆっくりと熟していきます。標高が高く涼しい土地ほど成熟に時間がかかり、そのぶん豆の中に甘さや酸がしっかりと蓄えられるとされます。

この間、生産者は草を刈り、木の手入れをし、さび病などの病気から木を守ります。シェードグロウンの農園では、日陰をつくる木々の手入れも欠かせません。


2. 収穫 — 熟した実だけを、一粒ずつ

実が緑から黄色、そして深い赤へと色づくと、いよいよ収穫です。同じ枝の上でも熟し方はばらばらなので、品質を重視する農園では、完熟したチェリーだけを選んで手で摘み取り、同じ木を何度も回ります。

熟度の目安として、チェリーの糖度(Brix)を測る生産者もいます。未熟な実が混ざると、カップに青臭さや渋みが出てしまうからです。収穫のていねいさは、そのままコーヒーの甘さにつながります。


3. 精製 — 果実から種を取り出す

摘み取ったチェリーは、その日のうちに精製の工程へ進みます。時間がたつと果実の中で予期しない発酵が始まってしまうためです。

この工程を担う施設をウェットミルと呼びます。ウォッシュドなら、パルパーで果皮と果肉を取り除き、発酵槽でミューシレージを分解してから水で洗います。ナチュラルなら、チェリーをそのまま乾燥場に広げます。

多くの小規模農家は、自分で精製設備を持たず、摘んだチェリーを地域の大きなウェットミルや協同組合に持ち込んで売ります。その場合、自分のコーヒーがどう精製され、どんな味になったのかを知ることは難しくなります。

GOOD COFFEE FARMSが提供するドライウォッシュは、ここに別の選択肢をつくります。自転車をこいで動かす自転車精選機を使えば、水・電気・燃料を使わずに、農家が自分の手でチェリーを精選できます。大きな設備に頼らずに済むことは、生産者が自分のコーヒーの品質と価値を自分で守ることにつながっています。


4. 乾燥 — ゆっくり、均一に

精製されたコーヒーは、乾燥の工程に入ります。パティオと呼ばれるコンクリートの広場や、風通しのよい高床式のアフリカンベッドに広げ、こまめにかき混ぜながら天日で乾かします。

水分値が10〜12%前後になるまで、天候や精製方法によって1〜4週間ほど。急いで乾かすとムラができ、品質が落ちてしまいます。雨が降れば覆いをかけ、晴れれば広げる。毎日空を見ながらの作業です。


5. レポソ — 豆を休ませる

乾燥を終えたコーヒーは、すぐには出荷されません。パーチメントの殻をつけたまま袋や倉庫で保管し、しばらく休ませます。この期間をレポソ(スペイン語で「休息」)と呼びます。

乾燥直後の豆は、外側と内側で水分にばらつきがあります。休ませることで水分が豆全体に均一になじみ、味わいが落ち着くとされます。期間は生産者によってさまざまで、数週間から数か月に及ぶこともあります。


6. 脱穀と選別 — 生豆になる

レポソを終えたコーヒーは、ドライミルへ運ばれます。ここでパーチメントの殻を取り除き(脱穀)、ようやく私たちがよく知る緑がかった生豆になります。

そのあと、豆は大きさ(スクリーンサイズ)や比重で分けられ、機械や人の目と手で欠点豆が取り除かれます。選別のていねいさは、カップのクリーンさを大きく左右します。


7. 海を渡り、焙煎されて、カップへ

選別を終えた生豆は袋に詰められ、コンテナに積まれて海を渡ります。産地から日本まで、船でおよそ1〜2か月ほど。品質を守るため、湿気や温度の変化を防ぐ専用の内袋が使われることもあります。

日本に届いた生豆は、焙煎所で焙煎され、はじめて香ばしい「コーヒー豆」になります。そして挽かれ、湯を注がれて、一杯のコーヒーとして私たちの前に置かれるのです。

一杯のコーヒーには、一年分の季節と、たくさんの人の手が溶けている。

RAW COFFEEが農園名や品種、精製方法を一つひとつ記載しているのは、この長い旅を少しでも感じてほしいからです。次の一杯を淹れるとき、白い花が咲く山の斜面と、そこで働く人たちのことを、ほんの少し思い浮かべてみてください。