焙煎所がコーヒーを仕入れるとき、届いた生豆をいきなり大きな焙煎機で焼くことはふつうありません。まずはほんの少しだけ焙煎して、味を確かめます。これがサンプルローストです。

カッピングは、生豆や焙煎豆の取引に欠かせない評価の方法です。そのカッピングのために豆を焼くのがサンプルロースト。今回は、その目的と、SCA(スペシャルティコーヒー協会)の基準で定められているポイントを紹介します。


目的は「豆を正しく見る」こと

ふだんの焙煎は、その豆をいちばんおいしく飲んでもらうためのものです。一方、サンプルローストの目的は、生豆そのものの個性や品質を見極めることにあります。

SCAのカッピングの基準(SCA-102)では、焙煎による味のばらつきをできるだけ小さくし、風味の違いが焙煎条件の違いではなく、生豆の違いから来るようにすることが求められています。そのため、焙煎の条件はサンプルごとにできるだけ一定に保ちます。

おいしく焼くための焙煎ではなく、豆の声を正しく聞くための焙煎。

焙煎度は「中煎り」にそろえる

カッピング用の焙煎度は、おおむね「中煎り」とされています。SCA-102では、挽いた粉の明るさで基準が決められています。

焙煎度は、色を測る機器や近赤外線を使う機器で管理するのが基本です。焙煎による重さの減り方や豆のふくらみ方を目安にする方法も、色の測定値との対応が確かめられていれば使ってよいとされています。また、焙煎機の種類や焙煎の条件は、目標の焙煎度に正しく届くのであれば、それぞれ違っていてもかまいません。

何らかの理由でこれと異なる焙煎度でカッピングする場合は、そのことを関係者全員に伝えるよう定められています。浅すぎると香りの成分が十分に育たず、深すぎると風味や欠点が覆い隠されてしまうともいわれます。


「焙煎の失敗」を避ける

焙煎度が目標の範囲に入っていても、焙煎そのものに問題があってはいけません。SCA-102では、よくある問題として、焙煎が速すぎる場合と遅すぎる場合を挙げています。

生焼けのような未発達の風味や、焦げ、ベイクドの特徴が見られるサンプルはカッピングに使わず、焙煎をやり直すことになっています。なお、SCAのガイドラインとして、焙煎時間を8〜12分とする目安も広く紹介されています。


焙煎のあとにも決まりがある

カッピングでは、豆8.25gに対して湯150mLの比率を使い、粉の70〜75%が20メッシュのふるいを通る程度に挽きます。ペーパードリップよりやや粗めの挽き目です。

豆はカップごとに量って、カップごとに挽きます。挽くのはカッピングの直前がよいとされ、同じサンプルを5杯用意して、カップどうしのばらつきも確かめます。焙煎で豆の性格を一定にそろえ、量り方や挽き方まで同じにしてはじめて、生豆どうしを公平に比べられるのです。

焙煎度計で色を測るときにも注意があります。挽き目や豆の温度をそろえる必要があり、チャフ(薄皮)の多いサンプルは測定の誤差が大きくなるとされています。


一杯の向こうにある、小さな焙煎

サンプルローストで確かめられた生豆だけが、次の段階へ進みます。そこから、それぞれの豆の個性を生かす焙煎プロファイルづくりが始まります。

私たちがお店で手に取る一杯の前には、こうした小さな焙煎と、何度ものカッピングが積み重ねられています。そう思うと、いつものコーヒーも少し違って見えてくるかもしれません。