同じ「コーヒー豆」でも、スペシャルティコーヒーの生豆の値段は、ロットによって大きく違います。その差を生んでいるのは、おもに品質と、生産者と買い手の関係です。

大量に流通するコーヒーとは異なり、スペシャルティコーヒーでは一つひとつのロットの品質が評価され、それが価格に反映されます。今回は、その価格がどのように決まるのかを紹介します。


品質に応じた価格の目安

米国エモリー大学の研究チームは、焙煎業者や商社から集めた匿名の取引データをもとに、「スペシャルティコーヒー・トランザクションガイド」を毎年公開しています。2024年版には123社が参加し、10万件を超える契約がまとめられました。

このガイドでは、価格をFOB(輸出港で船に積み込むまでの価格)で示しています。直近3年間の中央値は次のとおりです。

カッピングスコアが高いほど、価格も高くなる傾向がわかります。ロットの大きさによっても価格は変わります。2023年版では、コンテナ単位で取引される83点のコーヒーの中央値が1ポンドあたり2.20ドルだったのに対し、1,000ポンドの小さなロットで取引される87点のコーヒーは4.91ドルでした。

生産者や輸出業者は、スコアやロットの大きさ、産地をもとに価格を話し合う材料として、このガイドを使っているといいます。ガイドの創設者は、スペシャルティの生豆の価格は、変動の激しい先物相場とはほとんど関係なく決まりうると述べています。品質の最上位にあるコーヒーほど、相場の上下の影響を受けにくい傾向も報告されています。


品評会とオークション

品質がもっとも直接的に価格になるのが、カップ・オブ・エクセレンス(COE)のような品評会のオークションです。COEでは、国際審査で87点以上を得た上位30までのロットがオンラインのオークションにかけられます。すべてのロットの入札がいっせいに始まり、どのロットにも3分間入札がなければ締め切られるしくみです。

落札価格と落札者は公開され、落札額の大部分は受賞した生産者に届けられます。こうしたオークションは、生産者が受け取るプレミアムを高め、価格の透明性の基準をつくってきたとされます。

COEが始まる前は、品質のよいコーヒーにつく上乗せ分が、仲介業者のもとにとどまることが多かったとされます。多くのコーヒーは混ぜ合わされ、すぐれたロットも埋もれていました。2024年のエチオピアのCOEでは、シダマのベンサで生産されたナチュラルのロットが1ポンドあたり445ドルで落札され、COEの歴史で最高の価格になりました。入賞した29ロットの加重平均も、1ポンドあたり29ドルを超えています。

一杯の味わいが、そのまま生産者への評価になる。

生産者と買い手の関係

スペシャルティの世界では、生産者と買い手が直接つながるダイレクトトレードも広がっています。コスタリカでは、農園が自前の精製設備を持つことで、品種や精製方法ごとにロットを分け、買い手と直接関係を築けるようになったと紹介されています。

こうした取引では、相場に連動させず、あらかじめ決めた固定価格で契約することが多いといわれます。ただし、新しい試みのロットが、生産者の期待どおりの価格で売れるとは限りません。


価格を公開する動き

2018年にドイツ・ハンブルクで開かれた会議をきっかけに、焙煎業者などが取引の情報を公開する「透明性の誓約(The Pledge)」が生まれました。署名した会社は、次のような情報を公開することを約束しています。

あわせて、その年に扱ったコーヒーのうち、こうした情報を公開できるものの割合も示します。関係の長さまで公開の項目に含まれているのは、一度きりではなく、続いていく取引が大切にされているからなのかもしれません。


価格の向こう側にあるもの

スペシャルティコーヒーの価格は、品質への評価であり、生産者とのつながりのしるしでもあります。どこの、だれが、どのようにつくったのか。トレーサビリティの高いコーヒーを選ぶことは、その価格の意味に目を向けるきっかけになるはずです。