南米のコーヒーといえば、まずブラジルやコロンビアの名前が浮かぶかもしれません。その陰に隠れるようにして、アンデスの山あいで少しずつコーヒーをつくり続けている国があります。それがボリビアです。
生産量はけっして多くありません。けれど、品評会では驚くほど高い評価を受けたロットも生まれてきました。今回は、ボリビアのコーヒーについて紹介します。
海のない国の、山のコーヒー
ボリビアは海に面していない内陸国です。生豆は険しい山道を運ばれ、チリのアリカ港などから輸出されます。山がちな地形で輸送が難しいことは、輸出コストが高くなる理由のひとつとされています。
コーヒーの多くはラパス県でつくられ、そのほとんどがユンガスと呼ばれる地方に集まっているといわれます。ユンガスは、アンデスの高地からアマゾンの低地へと下っていく、山の東斜面に広がる地域です。
- カラナビ:ラパス県の代表的な産地。標高はおよそ1,400〜1,800mとされます
- 南ユンガス:標高1,600〜2,100mほどの、より高い産地
- サマイパタ:東部サンタクルス県の産地。標高は1,600〜1,800mほど
収穫期はおよそ6月から10月。熟したチェリーだけを選んで何度かに分けて手で摘む、手摘みが行われています。
小さな農家と品種
ユンガスでは18世紀からコーヒーが植えられていたとされますが、長く主要な作物ではありませんでした。カラナビなどで栽培が広がったのは1970年ごろからで、1980年代にはコカに代わる作物としてコーヒーを位置づける法律もつくられました。その後、協同組合や生産者団体が生産の中心を担うようになったといわれます。
ボリビアのコーヒー農家の多くは、1〜5haほどの小さな畑を営んでいるといわれます。1953年の農地改革で、1.5〜8haほどの区画が人々に分け与えられたことが、いまの小規模な農業の土台になっているとされます。
品種は、もともとティピカやカトゥーラが中心でした。近年はティピカをカトゥアイに植え替える農家も多く、ゲイシャなどを植える生産者も出てきています。精製はウォッシュドが中心ですが、ナチュラルなどのロットもつくられています。
品評会が光を当てた産地
ボリビアの名前がスペシャルティコーヒーの世界で知られるきっかけとなったのが、2004年に始まったカップ・オブ・エクセレンスです。この年の上位入賞ロットは、いずれもカラナビのものでした。1位に輝いたのは、82軒の農家のコーヒーを合わせたロットだったと記録されています。
カップ・オブ・エクセレンスは2009年を最後に休止しましたが、その後、国のコーヒー振興プログラムの支援を受けて、国内の品評会「タサ・プレシデンシアル」が開かれるようになりました。2022年に公的な資金が途絶えたあとも、民間の手で続けようとする取り組みが報じられています。
この品評会は、カラナビやコチャバンバ、サンタクルスなど、産地を巡りながら開かれてきました。2020年には、ラパス県のゲイシャが1ポンドあたり160ドルという大会の最高値で落札されたとも伝えられています。カラナビには、コーヒーの技術革新のためのセンターも2023年に完成しました。
標高の高い斜面で、ゆっくりと実るコーヒー。その一杯の向こうには、小さな畑を守る人たちがいます。
減りつづける生産と、その理由
一方で、ボリビアのコーヒー生産は長く減少傾向にあります。輸出量は1990年前後にピークを迎えたあと大きく落ち込んだとされ、2013年の報道では、生産者団体の代表が「2005年に11万袋だった輸出量が年7万袋ほどに減り、なお減り続けている」と語っています。
その理由として挙げられているのは、次のようなことです。
- 木の高齢化:古い木が多く、収量が落ちている
- 病気と気候:さび病や気候変動の影響
- コカとの競合:一年を通して収穫でき、利益も出やすいコカの栽培へ移る農家がいる
- インフラ:道路など、運ぶための基盤が十分でない
こうした中で、若い木への植え替えや栽培技術の指導によって、生産者を支えようとする取り組みも続けられています。
希少な一杯を、大切に
海から遠く離れた山の斜面で、小さな農家が手をかけて育てるボリビアのコーヒー。量は少なくても、その中には品評会で世界を驚かせたロットも生まれてきました。
見かける機会は多くないかもしれません。もし出会えたら、アンデスの山あいの風景を思い浮かべながら、ゆっくり味わってみてください。