コーヒーの品質は、畑だけで決まるわけではありません。摘み取ったチェリーをどう精製するかで、カップの味わいは大きく変わります。

ところが多くの小規模な生産者は、その精製を自分では行わず、チェリーのまま売ってきました。そんななか、生産者が自らの小さな精製所を持つ動きが生まれます。それがマイクロミルです。今回は、その代表的な産地として知られるコスタリカを例に見ていきます。


小さな農家の国、コスタリカ

中米の多くの国で大農園を中心にコーヒー産業が発展したのに対し、コスタリカのコーヒーは、小さな畑を営む多くの生産者によって支えられてきたとされます。マイクロミルが広がった背景には、こうした小規模生産の伝統があります。


チェリーを売るだけだった時代

コスタリカでは、生産者が摘んだチェリーを大きな精製所や協同組合に運ぶのが一般的でした。米国の生豆輸入会社ロイヤルコーヒー・ニューヨークによれば、第二次世界大戦の終わりごろには、上位4つの精製所が国のコーヒーの80%を扱っていたといいます。

チェリーを持ち込めば、その場で等級と量が記録され、翌日には支払いを受けられる。協同組合への出荷は、生産者にとって安定した仕組みでもあります。現在もコスタリカのコーヒーのおよそ40%は協同組合によって生産されているとされます。

けれども、1990年代から2000年代初めにかけてコーヒーの価格が下がると、チェリーの買い取り価格も低くなりました。生産者の手元に残るお金は、自分ではどうすることもできない相場に左右されていたのです。


自分たちで精製する、という選択

そこで、タラス地方の農園ラ・カンデリージャが、自らのマイクロミルを開きます。精製を自分たちの手で行えば、最終的な価格に対して発言力を持てる。生豆の価値を、ほかに手渡さずにすむ。それがねらいでした。

マイクロミルを持つことで、生産者には次のようなことが可能になります。

同社によれば、年間生産量の小さいマイクロミルが国全体の生産に占める割合は、1998/99年の0.1%から2.9%へと増え、2016年以降はおよそ毎月ひとつのペースで新しいマイクロミルが開かれているといいます。


実験の場としてのマイクロミル

コスタリカは、精製方法の試みがとくに盛んな産地として知られます。土地の価格が高く乾燥場所が限られること、ウォッシュドの排水処理にかかる費用を避けたいことなどから、果実味のある風味が生まれるハニーやナチュラルがマイクロミルで広まりました。近年は、タンクに密閉して発酵させるアナエロビックも増えているとされます。

精製を自分の手に取り戻すことは、価格を自分の手に取り戻すこと。

独立には、リスクもある

マイクロミルは、いいことばかりではありません。

それでも多くの生産者が、増える仕事とリスクを引き受けてでも、独立した経営を選んでいるといいます。高い品質と、それを評価してくれる買い手との関係が、マイクロミルを支えています。


小さな設備が、選択肢を広げる

大きな精製設備は高価で、小規模な農家には持つことが難しいものです。私たちが扱うGOOD COFFEE FARMSは、この課題に別の方向から取り組んでいます。手頃な価格で、設置や移動もしやすいよう設計された自転車精選機を使い、水・電気・燃料を使わずに果皮と果肉を取り除くドライウォッシュです。

精製の道具が小さく、身近になるほど、生産者が自分のコーヒーの価値を自分で高められる可能性は広がります。一杯のコーヒーの向こうにある「小さな精製所」に、ぜひ思いを寄せてみてください。