中米のコーヒーといえば、グアテマラやコスタリカ、パナマの名前がまず挙がるかもしれません。そのあいだに位置するニカラグアも、コーヒーが暮らしを支えている国のひとつです。

World Coffee Researchによると、コーヒーはニカラグアの農業GDPの20%以上を占め、農業の仕事のおよそ半分、約33万人の雇用を生んでいるとされます。今回は、この国のコーヒーの産地や育て方、そして抱えている課題について紹介します。


北部の山あいに集まる産地

ニカラグアのコーヒーは、北部の山あいに集中しています。米国農務省の報告によると、アラビカの農園の85%以上が北中部、主に次の3つの県にあるとされます。

収穫はおよそ10月から3月。伝統的に、木陰で育てるシェードグロウンのスタイルでアラビカ種が栽培されてきました。精製はウォッシュドが中心で、ほかの方法もときおり行われています。


多くの品種が育つ国

輸入商社の資料では、ニカラグアでよく見られる品種として次のようなものが挙げられています。

古い品種から病気に強い品種まで、さまざまな木が同じ国の中で育てられていることがわかります。


コーヒーの歴史

ニカラグアでコーヒーが主要な輸出品となったのは19世紀のこと。最初の大きな農園は首都マナグアの周辺に開かれ、イタリアやドイツからの移民にもコーヒーの土地を買うことが奨励されたといいます。その後、土地の再分配によって、小さな区画で栽培する農家が増えていきました。

輸出用の生豆は、標高による格付けでSHG(ストリクトリー・ハイ・グロウン)やHG(ハイ・グロウン)と呼ばれ、69kg入りの袋で出荷されます。


小さな農家と協同組合

ニカラグアでコーヒーづくりに関わる生産者は約4万4,000ともいわれ、コーヒーの半分ほどは小規模な農家によって生産されているとされます。山あいに点在する小さな農園は、単独では市場に届けるのが難しいこともあり、協同組合が大きな役割を担ってきました。フェアトレードなどの取り組みが、小さな生産者をまとめる後押しになったともいわれます。

一方で、1974年から1990年にかけての革命の時代や、1998年のハリケーン・ミッチなどの影響で、近隣の国々に比べてスペシャルティの市場に出ていくのが遅れたという見方もあります。

それでも、2002年には品評会カップ・オブ・エクセレンスのオークションが開かれ、ジノテガやマタガルパの農園のロットが国際的なバイヤーに落札されました。このとき最高値をつけたロットは、日本のロースターが落札しています。入賞したのは、国内と国際の審査員のどちらからも85点以上の評価を受けたロットでした。

産地の名前だけでなく、農園や生産者の名前でコーヒーが選ばれる。品評会は、小さな農園が自分たちの品質を世界に示す場にもなっています。

山あいの小さな農園の一杯が、海を越えて誰かの朝に届く。

さび病と、これからの課題

2013年、ニカラグアはさび病の大流行に見舞われました。その後、病気に強い品種への植え替えが進められてきましたが、2013年から2025年までに植え替えられたのは、全体の面積のおよそ14%、約2万ヘクタールにとどまるとされます。長期の融資や、新しい品種の苗を手に入れる手段が限られていることが壁になっています。

一方で、品質の面では明るい知らせもあります。2024年のカップ・オブ・エクセレンスでは、北部ヌエバ・セゴビアの農園ロス・アルペスのゲイシャのナチュラルが91.10点で1位に選ばれ、1ポンドあたり109ドルで落札されました。

輸入商社Cafe Importsによると、ニカラグアはこれまで、フェアトレードや有機認証のコーヒーをコンテナ単位で届ける産地として知られてきました。同社は、この国でマイクロロットの可能性も探りはじめているといいます。

天候の変化や肥料の値上がり、働き手の不足など、生産者が向き合う課題は少なくありません。ニカラグアのコーヒーを手に取るときは、北部の山あいで木を育てる人たちのことを、少しだけ思い浮かべてみてください。