コーヒーの産地を訪ねると、農園の一角に広がる平らな広場が目に入ることがあります。そこに茶色や赤のコーヒーが一面に広げられ、人が熊手のような道具で豆をならしている。それがパティオでの乾燥です。

パティオはスペイン語で「中庭」を意味する言葉で、コーヒーの世界では豆を乾かすための広場を指します。今回は、このパティオでの乾燥について紹介します。


パティオとは

パティオは、コーヒーを天日で乾かすために平らに整えた地面のことです。ブラジルではポルトガル語で「テヘイロ(terreiro)」と呼ばれます。FAO(国連食糧農業機関)の指針によると、世界のコーヒーの多くは、次のような面の上で天日乾燥されています。

豆を表面に広げ、定期的に返しながら、太陽の熱と風で水分を飛ばしていきます。FAOによれば、天日乾燥はコーヒーでもっとも一般的な乾燥方法で、機械乾燥を取り入れている地域でも、乾燥期間のかなりの部分は天日で行われるのがふつうです。


乾かす面で、カップは変わる

どんな面の上で乾かすかは、カップの評価にも表れることがあります。ブラジル・ミナスジェライス州南部、標高850mの農園で行われた試験では、手摘みしたアラビカ種(カトゥアイ・ベルメーリョ144)を、ナチュラルと、果肉と粘質を取り除いたものに分け、3種類の面で水分12%まで乾かして、SCAAの方式でカッピングしました。

土の上で乾かしたコーヒーは、統計的にも評価が低くなりました。コンクリートのパティオでは、乾燥が3日早く終わったことも報告されています。研究者たちは、乾燥の方法が最終的な品質に影響すると結論づけています。

FAOの指針によると、多くの機械乾燥機は、水分35〜40%ほどまで天日で乾かした豆を受け入れる設計になっています。また機械乾燥は、パティオの場所をあけるため、天日乾燥の最後に補助的に使われることが多いとされています。


パティオでの仕事

FAOの指針には、パティオでの乾燥をうまく進めるためのポイントがまとめられています。

FAOは、パーチメントはにおいが移りやすいため、清掃しやすく水はけのよい面を使うべきだとしています。雨の多い地域では、土のパティオは勧められないとも述べています。

乾いた豆を、もう一度濡らさない。それが乾燥のいちばんの基本。

雨と夜露への備え

乾燥中にもっとも気をつけたいのが、再び濡れてしまうことです。FAOの指針は、ゆっくり乾くことよりも、再び濡れることのほうが深刻な場合があると述べています。

そのため、ある程度乾いた段階で(パーチメントでおよそ1日、チェリーで3日が目安)、夜は豆を寄せて覆い、露やにわか雨から守ります。チェリーは乾燥を始めて3日ほどまでなら多少濡れても影響は小さいとされますが、パーチメントは常に雨から守る必要があります。

乾燥の終わりが近づいたら、水分値を測りながら仕上げていきます。FAOが示す目安は、パーチメントで12%未満、チェリーで13%未満です。


パティオで乾かしたコーヒー

RAW COFFEEで扱っているグアテマラ ナチュラルは、パチェ種100%のナチュラルで、嫌気性発酵70時間のあと、パティオで18日間かけて乾燥されています。チェリーを丸ごと乾かすナチュラルは、果実の個性を引き出す製法です。

同じパティオでも、天気や豆の状態を見ながら、広げ方や返し方を変えていく。その毎日の判断が、乾燥の仕上がりを決めています。


広場に流れる、乾燥の時間

パティオ乾燥は、太陽と風というだれにでも手に入るエネルギーを使った、シンプルな方法です。けれどもそのシンプルさの裏には、天気を読み、豆を返し、雨から守るという、生産者の地道な仕事があります。

コーヒーを淹れるとき、その豆が太陽の下で何日も広げられていた時間を思い浮かべてみてください。一杯の味わいが、少し違って感じられるかもしれません。