私たちがコーヒー豆と呼んでいるものは、コーヒーチェリーと呼ばれる赤い果実の種です。精製の工程では、この種を取り出すために、果皮や果肉が取り除かれます。
取り除かれた果皮は、乾燥させて飲み物にすることもできます。それがカスカラです。今回は、コーヒーの果実のもうひとつの楽しみ方を紹介します。
カスカラとは
カスカラは、乾燥させたコーヒーチェリーの果皮です。湯に浸して、お茶のように飲むのが一般的な楽しみ方です。
EUで新しい食品としての認可を求めた申請資料では、カスカラを「ナチュラル(乾式)精製から得られる、コーヒーの果実の乾燥した殻」と定義しています。果実を丸ごと乾燥させたあと、殻をはずして種と分けたもので、次のようなものが含まれます。
- 果皮と、果肉の名残
- ペクチン
- パーチメント(内果皮)
- シルバースキン(種を包む薄皮)の一部
同じ資料は、これと似たものとして「乾燥させたコーヒーパルプ」も挙げています。こちらはウォッシュド精製で、乾燥の前にパルパーなどで取り除かれる果皮と果肉からつくられるもので、含まれる成分は似ていても、その割合や作り方が異なるとしています。
どうやってつくられるのか
EFSAの評価書では、EUでの申請の対象になったカスカラの製法を、次のように説明しています。
- 収穫したコーヒーチェリーを、日光や風で水分12%ほどまで乾燥させる
- しばらく寝かせる
- 機械で殻をはずし、種と殻を分ける
できあがったカスカラは1〜6mmほどの不ぞろいな粒で、主な成分は消化される炭水化物と食物繊維、水分です。申請資料によると、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルのほか、カフェイン、タンニン、ポリフェノールなども含まれています。
古くから飲まれてきた果実
コーヒーの果実の部分は、いまのエチオピアにあたる地域で、およそ1000年前から食べ物や飲み物の材料として使われてきたとされます。
欧州食品安全機関(EFSA)の評価書によると、コーヒーの果実はイエメン、エチオピア、ウガンダで長く利用され、近年ではボリビアやブラジルでも使われています。
- イエメンの「キシル」:スパイスを加えた果皮の煎じ茶で、16世紀にさかのぼるとされます
- エチオピア:オロモの人びとが果皮を利用してきた例が知られています
現在では、オーストラリア、アメリカ、カナダ、日本、インドなどでも、カスカラやカスカラを使った製品が売られています。
種だけでなく、果実まるごとがコーヒーの恵み。
カスカラとカフェイン
カスカラにもカフェインが含まれています。EFSAの評価では、規格上のカフェイン量は100gあたり100〜1,000mg、実際に分析されたロットでは100gあたり135〜652mgでした。湯で浸すと、そのうち8割から全量が溶け出したとされます。
EFSAは、1リットルあたり150mgを超えるカフェインを含む飲み物については、子どもや妊娠中・授乳中の人には勧められないとするEUの表示ルールが適用されると述べています。カスカラも、量によってはコーヒーと同じようにカフェインを意識して楽しむ必要があります。
EUでの安全性評価
カスカラは、EUでは1997年5月以前に域内で食べられてきた実績が確認されていない「新規食品」として申請され、販売には安全性の評価が必要でした。申請を受けたEFSAは2022年に評価書を公表し、提案された使い方であれば安全であると結論づけています。
申請では、清涼飲料やお茶、エナジードリンクなどの材料として、湯1リットルあたり最大60gで使うことが想定されていました。消費者が食べるのは果皮そのものではなく、湯に浸して成分を引き出した飲み物です。
果実の向こうにある、もうひとつの味
カスカラは焙煎された豆ではなく、乾燥させた果実の皮からつくられます。同じコーヒーの木から生まれたものでも、いつものコーヒーとはまったく別の飲み物です。
コーヒー豆が果実の種であることを、カスカラは思い出させてくれます。どこかで見かけたら、ぜひ一度試してみてください。いつものコーヒーが、果実から生まれたものだということを、きっと実感できるはずです。