同じ豆を使っているのに、お店で飲んだときと家で淹れたときで、味がまったく違う。そんな経験はないでしょうか。焙煎や豆の鮮度ももちろん大切ですが、その違いを生む大きな要因のひとつが抽出器具です。
コーヒーの抽出とは、挽いた粉から、湯を使って成分を溶かし出すこと。どんな器具を使うかによって、湯と粉が触れる時間、圧力、そして何で漉すかが変わり、それがカップの味わいを大きく左右します。
抽出の2つの考え方:「透過」と「浸漬」
抽出器具は、大きく2つのタイプに分けられます。
透過式は注ぎ方や流れの速さで味が変わり、すっきりとした味わいになりやすい方法。浸漬式は時間さえ守れば味が安定しやすく、豆の持つ成分をまるごと引き出しやすい方法です。そしてもうひとつ大切なのが、フィルター。紙で漉すか、金属で漉すかによって、カップに残るものが変わります。
ハンドドリップ — 豆の個性を、すっきりと
ペーパーフィルターをセットしたドリッパーに粉を入れ、細口のケトルで湯を注いで淹れる方法です。まず少量の湯で粉を湿らせる蒸らしを行い、そのあと数回に分けて注いでいきます。
紙のフィルターは、コーヒーの油分や細かな粉を吸着します。そのため、雑味が少なくクリーンな味わいになり、酸味や香りの繊細な違いがよく表れます。
フレンチプレス — 豆のすべてを、まるごと
ポットに粗挽きの粉と湯を入れ、数分おいてから金属のフィルターを押し下げて粉を分ける器具です。湯を注いで、待って、押し下げるだけ。シンプルで、誰が淹れても味がぶれにくいのが魅力です。
金属のフィルターは油分を通すため、カップの表面にはうっすらと油の膜が浮かびます。この油分が、とろりとしたボディや豊かなマウスフィールを生み出します。一方で、細かな粉も少しカップに残るため、最後のひと口は飲まずに残すのがおすすめです。
- 挽き目:粗挽き
- 抽出時間:4分前後が目安
- 向いている豆:豆の質感や甘さをしっかり感じたいときに。焙煎度を問わず楽しめます
エアロプレス — 手軽さと自由さ
エアロプレスは、筒状の容器に粉と湯を入れ、ピストンで空気の圧力をかけて押し出す器具です。浸漬と加圧を組み合わせた独特のしくみで、短い時間でしっかりとした味わいを引き出せます。
軽くて割れにくいため、アウトドアや旅先にも持ち運びやすいのが特徴です。粉の量、挽き目、湯温、浸す時間、押す速さなど、レシピの自由度がとても高く、世界中で抽出レシピを競う大会も開かれています。
- 挽き目:中細挽き〜中挽き(レシピによってさまざま)
- フィルター:ふつうは専用のペーパー。金属フィルターに替えるとボディが増します
- 向いている人:いろいろな淹れ方を試してみたい方に
エスプレッソ — 圧力が生む、濃密な一杯
エスプレッソは、細かく挽いた粉を固く詰め、約9気圧の圧力をかけた湯を30秒前後で通して抽出します。少ない量に成分がぎゅっと凝縮され、濃厚な味わいと重厚なボディが生まれます。
表面を覆う黄金色の泡がクレマです。圧力によってコーヒーの油分と、豆に含まれる炭酸ガスが乳化してできたもので、焙煎したての豆ほど豊かに立ちます。焙煎直後の豆はガス抜けが盛んで抽出が安定しにくいため、少し休ませてから使うのが一般的です。
- 挽き目:細挽き
- 向いている豆:中煎り〜深煎りやブレンドが定番。近年は浅煎りのシングルオリジンで淹れるお店も増えています
- ポイント:専用のマシンとグラインダーが必要で、わずかな条件の違いで味が大きく変わる、繊細な抽出です
器具を選ぶときの、ちいさな目安
- すっきり、香り高く → ハンドドリップ
- とろりと、まろやかに → フレンチプレス
- 手軽に、いろいろ試したい → エアロプレス
- 濃く、ミルクと合わせても → エスプレッソ
どの器具を使う場合でも、大切なのは新鮮な豆を、淹れる直前に、器具に合った挽き目で挽くこと。それだけで、カップの印象は見違えるほど変わります。
器具が変われば、同じ豆でも、別の表情を見せてくれる。
お気に入りの豆を見つけたら、ぜひ別の器具でも淹れ比べてみてください。ハンドドリップでは気づかなかった甘さが、フレンチプレスでふと顔を出す——そんな発見も、コーヒーの楽しみのひとつです。RAW COFFEEの豆の一覧から、淹れ比べの一杯を選んでみてはいかがでしょうか。