一杯のコーヒーを淹れるとき、私たちはお湯の温度や水の質を気にします。けれども、コーヒーと水の関係は、カップにたどり着くずっと前、畑の中から始まっています。

今回は、コーヒーの栽培と水、そして畑に水を引く灌漑(かんがい)について見ていきます。


雨が花を咲かせる

コーヒーの木にとって、雨はただの水分補給ではありません。開花の合図でもあります。

ハワイのコナ・コーヒー農家協会の解説によると、アラビカ種は乾季と雨季のはっきりした熱帯の高地の森で進化してきた植物です。

  1. 乾いた時期が続くと、花のつぼみは成長を止めて休眠する
  2. そのあとの最初のまとまった雨で、つぼみが水を吸って目を覚ます
  3. 多くの木で、一斉に花が開く

ブラジルのヴィソーザでの観察では、約2か月休眠していたつぼみが、14.3mmの雨のあと成長を再開し、およそ12日後に花を咲かせたと報告されています。花の時期が実の熟す時期を決めるため、雨の降り方は、その年の収穫にも関わってきます。


雨が足りないとき

反対に、雨が少なすぎると、木は花や実を十分に育てられなくなります。

アメリカ農務省(USDA)の2024年の報告によると、ブラジルでは2023年10月から12月にかけて、主な産地で雨が平年より少なく、厳しい暑さが続きました。その影響で花や実の発育が妨げられ、収量の見通しが引き下げられたとされています。

雨の量は種によっても求められる量が違い、ある総説では、アラビカ種に適した雨の量は年間1,200〜2,200mmほどと紹介されています。気候変動で雨の降り方が変わりつつある今、水は産地にとってますます大きな課題になっています。


畑に水を引く、灌漑

雨だけに頼らず、畑に水を引いてコーヒーを育てる産地もあります。

エクアドルでは、水の不足はコーヒー生産で3番目に大きな問題とされ、栽培面積の8%に影響しているといわれます。灌漑は、雨の少ない土地や年でも木を守るための大切な手段なのです。

空からの雨を待つ畑と、地面から水を届ける畑。どちらにとっても、一滴の水が一年の実りを左右します。

精製でも使われる水

コーヒーと水の関係は、収穫のあとにも続きます。

ウォッシュドの精製では、果肉を取り除き、ミューシレージを発酵させたあと、きれいな水で洗い流します。2022年の総説では、果肉とミューシレージを取り除くために、コーヒー1kgあたり40Lもの水が使われることがあると紹介されています。

使う水の質も大切です。国連食糧農業機関(FAO)の資料では、pHが低い水や有機物の多い水、鉄分の多い水を精製に使うと、酸っぱい味や発酵臭などの欠点につながると指摘されています。また、収穫したチェリーは10時間以内に精製するのが望ましく、やむをえず水に浸けておく場合も24時間までとされています。

一方で、水をほとんど使わない方法もあります。

GOOD COFFEE FARMSは、燃料や電力を使う大型の精製設備では大量の水が使われ、使用後の汚水の多くが川に捨てられているという問題を指摘しています。RAW COFFEEのグアテマラ ハニーやコロンビア ドライウォッシュも、この自転車精選機で精製されたコーヒーです。


水を思いながら、一杯を

乾いた季節のあとの雨、畑に引かれる水、そして精製の工程で使われる水。コーヒーの一生は、いつも水とともにあります。

次にコーヒーを淹れるときは、カップの中の水だけでなく、産地の畑に降った雨や、精製で使われた水のことにも、少し思いをはせてみてください。水を大切にする精製のコーヒーを選ぶことも、産地の水を守るひとつの方法です。