コーヒー産地の紹介を読んでいると、「火山灰土壌」という言葉をよく見かけます。火山のふもとで育ったコーヒー、と聞くと、なんだか特別なものに思えてきます。
では、火山性土壌とはどんな土なのでしょうか。今回は、その性質と、コーヒーの栽培や味わいとの関係について見ていきます。
火山灰から生まれる土
火山の噴火で降り積もった火山灰などからできた土は、土壌の分類で「アンディソル(Andisols)」と呼ばれます。アイダホ大学の解説によると、この名前は「黒い土」を意味する日本語の「アンド(ando)」に由来しています。
アンディソルは、世界の陸地(氷に覆われていない部分)のわずか1%ほどしか占めない、とても珍しい土です。それでも火山のそばには、この土に育まれてきたコーヒー産地が少なくありません。
この土の特徴は、火山ガラスや、アロフェン、イモゴライトといった、結晶になりきらない細かな粘土鉱物を多く含むことです。これが、ほかの土にはない性質を生み出します。
水を抱える、ふかふかの土
火山性土壌の性質は、おおよそ次のようにまとめられます。
- 軽くてやわらかい:ふかふかとして、耕しやすい
- 水をよく保つ:スポンジのように、たくさんの水を抱えることができる
- 有機物がたまりやすい:鉱物が有機物と強く結びつくため、表層に有機物が蓄積しやすい
- 肥沃なことが多い:風化がそれほど進んでいなければ、とても肥沃な土になる
一方で、弱点もあります。火山性土壌は、植物の栄養であるリン酸と強く結びついて「固定」してしまうため、植物が使えるリンが不足しやすいのです。また、長い時間をかけて風化が進んだ火山性土壌は、酸性が強く、養分の乏しい土になることもあるとされます。
水を抱え、根をのびのびと広げさせてくれる土。けれど、その土の力を引き出すには、土を知る手入れが欠かせません。
火山とコーヒーの産地
火山性土壌が広がる地域には、よく知られたコーヒーの産地がいくつもあります。
- グアテマラ:全日本コーヒー協会は、豊かな降雨量と肥沃な火山灰土壌が、コーヒーの栽培に適した条件だと紹介しています
- コロンビア・カウカ県:コロンビアコーヒー生産者連合会によると、カウカのコーヒーは平均標高約1,700mの、火山灰に由来する土壌で育てられています
- パナマ:西部では、養分に富んだ火山性の土壌でアラビカが育てられている例が紹介されています
ただし、すべての産地が火山性土壌というわけではありません。イリノイ大学の研究グループは、パナマ西部の養分豊かな火山性の土と、タンザニア北部の酸性でやせた土という対照的な土壌を例に挙げ、コーヒーベルトの土の多様さを示しています。産地ごとに土に合わせた管理が必要だというのが、研究者たちの考えです。
このグループは、グアテマラで生産者と協力して、標高ごとに土を調べています。土の違いが木の育ち方や収量、さらにはカップの品質にどう関わるのかを明らかにしようという試みです。
土は、味に影響するのか
土とコーヒーの味の関係は、まだわかっていないことも多い分野です。2022年に発表された総説では、中米や東アフリカのコーヒーに酸味の強いものが多い理由のひとつとして、豊かな火山性土壌で育てられていることを挙げる研究が紹介されています。
同じ総説では、土の養分と味わいの関係についての報告もまとめられています。
- 窒素が多すぎると、カフェインが増えて苦味が強くなる傾向がある
- カルシウムやカリウムが多すぎたり、マグネシウムが足りなかったりすると、苦味が増すことがある
- 土の主要な養分が増えると、官能評価が高まる傾向が報告されている
つまり、土の力は「火山性かどうか」だけで決まるわけではなく、養分のバランスや管理のしかたも大切だということです。土は、標高や気候とあわせて、産地のテロワールをかたちづくる要素のひとつといえるでしょう。
火山の恵みを味わうなら
ラベルに「火山灰土壌」と書かれたコーヒーを見かけたら、その土がどんなふうに水を抱え、木を育ててきたのかを想像してみてください。
そして、同じ火山性の産地でも、標高や品種、精製によって味わいは大きく変わります。土を手がかりのひとつとして、産地ごとの個性を飲み比べてみるのも楽しいはずです。