「浅煎り」「中煎り」「深煎り」。焙煎度を表す言葉は身近ですが、同じ「中煎り」でも、お店によって思い浮かべる色は少しずつ違います。言葉だけでは、どうしても幅が出てしまうのです。
そこで焙煎の現場では、豆の色を機械で測り、数字で表す方法が使われてきました。その代表がアグトロンです。今回は、この数字の読み方を紹介します。
光の反射で色を数字にする
アグトロンは、もともとコーヒーの色を測る分析機器のメーカーの名前です。コーヒーの評価誌Coffee Reviewによると、アグトロンの機器は近赤外線の分光光度計で、コーヒーに当てた光の反射を読み取り、ひとつの数値を割り当てます。
覚えておきたいのは、数字の向きです。
- 数字が大きいほど、色が明るく、浅い焙煎
- 数字が小さいほど、色が暗く、深い焙煎
アグトロンには「グルメスケール」と「コマーシャルスケール」という二つの目盛りがあり、測る機器も異なります。数字を見るときは、どちらの目盛りなのかにも注意が必要です。
数字と焙煎度の対応
Coffee Reviewは、アグトロンの数値をもとに焙煎度を次のように呼び分けています。
- ライト:80より上
- ミディアムライト:70〜80
- ミディアム:60〜70
- ミディアムダーク:50〜60
- ダーク:40〜50
- ベリーダーク:25〜40
日本でおなじみの8段階の呼び名と対応させた例もあります。焙煎度と成分の変化を調べた研究では、95をライト、85をシナモン、75をミディアム、65をハイ、55をシティ、45をフルシティ、35をフレンチ、25をイタリアンとして整理しています。
ただし、こうした対応表は資料によって少しずつ異なります。数字は「この範囲ならこう呼ぶことが多い」という目安として見るのがよさそうです。
豆のままと、挽いたあと
Coffee Reviewでは、アグトロンの数値を「55/68」のように二つ並べて記載しています。前が豆のまま、後ろが挽いた粉を測った値です。
豆の外側と内側では焼け具合が異なるため、二つの数字には差が出ます。Coffee Reviewは、この差に焙煎についての情報が含まれていると説明しています。
- 深い焙煎では、差は小さくなる傾向がある
- 浅い焙煎では、差は大きくなる傾向がある
浅煎りなのに差が小さい場合は、香りの広がりが乏しい理由を説明できることもあるとされます。表面の色が同じでも、中まで同じように火が通っているとは限らないということです。
色と成分の変化
アグトロンの数値は、研究の場でも焙煎度の物差しとして使われています。先に紹介した研究では、焙煎度を色の数値で段階分けし、抽出液の性質を調べました。
- pHの変化:焙煎が進むにつれて抽出液のpHは下がり、数値75(ミディアム)あたりで最も低くなったあと、さらに深い焙煎では上がっていった
- クロロゲン酸:焙煎の過程で分解され、深くなるほど減っていく。分解で生じるカフェ酸が、pHの変化に関わっていると考えられている
浅煎りから中煎りにかけて酸味を感じやすく、深煎りでは穏やかになる。そうした味わいの変化の背景にも、色の数値とともに動く成分の変化があるのかもしれません。
色は焙煎の「結果」を映す鏡。けれど、そこに至る道のりまでは映らない。
数字との付き合い方
アグトロンの数字は便利ですが、万能ではありません。
- 機器によって差が出る:Coffee Reviewは、それぞれの機器は一貫していても、メーカーや機種が違うと数値にばらつきが出ることがあると指摘しています
- 色は味のすべてではない:同じ色に仕上がっても、焙煎プロファイルやデベロップメントタイムが違えば、味わいも変わりうる
- 先入観を避ける:Coffee Reviewでは、色が評価に影響しないよう、味の評価を終えてからアグトロンを測っています
焙煎する側にとって、アグトロンは毎回の焙煎を同じように再現するための記録として役立ちます。飲む側にとっても、焙煎度の言葉の幅を埋めてくれるヒントになります。
次にコーヒー豆を手にしたら、その色をじっくり眺めてみてください。数字はわからなくても、明るさの違いに気づくだけで、焙煎の物語が少し見えてきます。