コーヒーの味わいは、焙煎や抽出の前に、すでにかなりの部分が決まっています。どんなに丁寧に焙煎しても、もとの生豆に問題があれば、その欠点は一杯の中に残ってしまいます。
では、焙煎する前の生豆は、どのようにして品質を見極められているのでしょうか。この記事では、生豆を評価するときに見られるポイントを順に紹介します。
生豆の品質を決める、ふたつの見方
生豆の評価は、大きく分けてふたつの方向から行われます。
- 見た目と物理的な状態:欠点豆の数、粒の大きさ、色、水分値など、生豆そのものを調べる
- 味わい:実際に焙煎し、カッピングで香りや味を評価する
スペシャルティコーヒーと呼ばれるためには、この両方の基準を満たす必要があります。カップの評価だけが高くても、生豆に欠点が多ければスペシャルティとは認められません。この記事では、主に前者の「生豆そのもの」を見る方法を取り上げます。
欠点豆を数える
生豆の評価でまず見られるのが、欠点豆の数です。欠点豆とは、品質を損なう原因になる豆のこと。代表的なものには次のようなものがあります。
- 黒豆:過発酵や、地面に落ちた実が原因で黒く変色した豆
- 発酵豆:精製中の管理の失敗などで、酸っぱいにおいや不快な発酵臭を持つ豆
- 虫食い豆:害虫に穴をあけられた豆
- 未熟豆:熟す前に摘まれた実からとれた豆。焙煎しても色づきにくく、渋みの原因になる
- カビ豆、割れ豆、異物:乾燥や保管の不備、脱穀時の傷、石や枝の混入など
SCAの格付けでは、一定量のサンプルの中にある欠点豆を、種類ごとに味への影響の大きさに応じて換算して数えます。黒豆や発酵豆のように一粒でも味に大きく影響するものは、重大な欠点として厳しく扱われます。
欠点豆の多くは、畑と精製の段階で生まれます。完熟した実だけを選んで摘む手摘みの収穫や、丁寧な精製と乾燥は、欠点豆を減らすためのいちばん確かな方法でもあります。
粒の大きさと、硬さ
生豆の大きさは、スクリーンサイズで表されます。穴の大きさの違うふるいに豆を通し、どの穴に残ったかで粒の大きさを分ける方法です。
大きさをそろえることで焙煎のムラが減り、品質が安定します。ただし、大きい豆ほどおいしいというわけではありません。小粒でも風味のすぐれた品種はたくさんありますし、一粒だけのピーベリーのように、あえて分けて楽しまれるものもあります。
産地によっては、標高による格付けも使われます。中米のSHBがその例で、高地で育った硬く締まった豆であることを示します。
水分値と水分活性
見た目ではわかりにくい大切な指標が、水分値です。精製と乾燥を終えた生豆は、一般におよそ10〜12%の水分値に整えられて取引されます。
- 高すぎると、カビが生えやすくなり、保管中に品質が落ちやすくなる
- 低すぎると、豆の生き生きとした風味が失われ、枯れたような味になりやすい
近年は、水分値とあわせて水分活性も測られるようになってきました。水分活性は、豆の中の水のうち、微生物や化学変化に使われうる「自由に動ける水」の割合を示す数値です。水分値が同じでも水分活性が高い豆は、保管中の劣化が進みやすいとされます。
おいしさは、目に見える部分だけでなく、目に見えない水の状態にも支えられている。
最後は、人の目と手で:ハンドピック
機械による選別が進んだいまも、品質を仕上げる最後の工程として大切にされているのがハンドピックです。生豆を広げ、欠点豆や異物を人の目で見つけて、一粒ずつ手で取り除きます。
産地の選別工場では、ふるいや比重による選別、色で欠点豆をはじく光学選別機などが使われます。それでも取り切れない欠点豆を、人の手が拾い上げます。焙煎の前だけでなく、焙煎のあとにも、色づきの悪い豆を取り除くことがあります。
根気のいる作業ですが、たった数粒の欠点豆が一杯の印象を変えてしまうこともあります。クリーンカップと呼ばれる澄んだ味わいは、こうした地道な積み重ねから生まれています。
生豆の品質は、つくる人の仕事の記録
欠点豆の少なさ、そろった粒、適切な水分値。それらはすべて、畑での収穫、精製、乾燥、選別に関わった人たちの仕事の結果です。
生豆の品質を見極めるということは、その豆がどんな人の手を経て届いたのかを読み取ることでもあります。次にコーヒーを飲むときは、焙煎される前の、緑がかった小さな豆の姿を思い浮かべてみてください。